三陸うめちゃんコラム
三陸うめちゃんコラムvol.11~3.11から14年と大規模林野火災~

○はじめに
2025年の最初のコラムは奥能登か3.11かと思っていたのですが、「あれから14年」を前に大船渡で大規模な火災が発生してしまいました。目まぐるしく変わる周辺状況を時系列にまとめているうちに岡山や愛媛でも火災が発生し、更にはミャンマーで地震と、あらためて一年を平穏無事に過ごすことのありがたさを痛感しています。
○3.11を迎えるタイミングで、どうして…。
三陸沿岸部では「3.11」が近づく頃になると心がザワザワするのですが、そんな2月に、大船渡で山林火災が発生しました。後に大きく報じられることになる「大船渡市大規模林野火災」ですが、実はその前に大船渡と陸前高田で山火事が発生していてそれぞれ避難指示が出され、消火活動により鎮圧、避難指示も解除されるという状況が続いていました。そして2月26日、大船渡で火災発生。またかと思ったその火災は、私たちの想像を遥かに超え、後に激甚災害に指定されるほどの林野火災となりました。

3.11を迎えるタイミングで、どうして…。避難指示により避難所などにいる方々は自分が被災者なのかもわからない状況です。東日本大震災後、高台移転し再建した自宅が被害に遭ってしまった方もいると思うとやるせない気持ちでいっぱいでした。
私は3月4日から7日の間で、3.11を前に釜石や大槌に手を合わせに行く予定でした。しかし火災が発生して以降、大船渡の状況を確認する日々を送りました。3月に入り状況が良くなる兆しがない中で、私は今できることは何か、行ってできることは何かを考えつつも、地元の皆さんの迷惑にならないように「何をしないか」も含め、被災地域の外側にいる私を含めたその他大勢のための情報を整理して、来るべき時に備えようと考えていました。
訪問予定日が近づき、行ったところでまだ何ができるという段階ではなくても、顔を見れば互いにホッとする間柄があったり、手を合わせるために帰ってきているからこそできることがあるとして、大船渡にいつでも行けるのりしろを残しておく滞在期間にしようと思いました。

(さとふる:ふるさと納税で被災地を応援)
○信頼できる情報と伝え手の存在
私が滞在する数日間とその前後は、状況が刻々と変わっていく前段になりました。まだ何ができる訳ではない段階でも緊急支援寄付サイト等が立ち上がり寄付をすることができました。また、「○○らしい」という曖昧な語尾のせいで情報の確からしさが薄れて混乱を招きやすい短文投稿サイト等のSNSでの情報発信において、大船渡市市民活動支援センターがFacebookで丁寧に整理された情報を出してくださったこと、被害に遭った綾里に暮らす「東北食べる通信」編集長の阿部正幸氏がこちらもFacebookでリアルタイム更新をしてくださったこと、加えて大船渡市、陸前高田市、住田町の気仙地区を拠点に絶大な信頼を誇る東海新報がこちらもFacebookで、3.11の追悼記事を前に現在の状況をつぶさに更新してくださったこと、これらのおかげで知りたかった大船渡の状況がつかめ、大船渡と自分との距離がグッと近くに感じられました。誰から、どこから情報を得るかというのは、その後の自分の言動に大きな影響を与えますね。

大船渡市市民活動センター https://www.facebook.com/ofntshimin

阿部正幸氏 https://www.facebook.com/masayukiabemasayuki

東海新報 https://www.facebook.com/tohkaishimpo
○日常と非日常の風景
三陸沿岸へと向かう日、東京でも降雪の影響を懸念して「予防的通行止め」として、幹線道路や首都高速が通行止めになりました。この影響を回避しようと予定よりも早く自宅を出発したのですが、東北道でも予防的通行止めとなり、いつまでかもわからない状況が続いたので、引き返して北関東自動車道から常磐道で宮城県入りするなどの変更を余儀なくされました。常磐道は吹雪いていたので、この状況なら大船渡の火災も鎮火に向かうのではないかと、運転には支障があるこの雨雪を喜んでいる自分がいました。
岩手に入り、一関で友人とランチをとりながら状況確認し、大船渡に。雨脚が強まったおかげか火災による白煙などは視認できませんでした。数日前まで、市街地にあるキャッセン大船渡から対岸の赤崎地区の山々が赤く燃える様子が見えたと話してくださる方がいました。今回の大規模火災で赤崎方面は通行止めになっていました。

(大船渡市の大規模火災エリア/市街地は大船渡市の印があるあたり)

(キャッセン大船渡から対岸の赤崎地区の山々を望む)

(大船渡市防災観光交流センター屋上から通常営業中の中心市街地を望む)
一方で、キャッセン大船渡の周辺は、飲食店もスーパーも通常通り営業していました。3.11前後で訪問予定だった方々がツアーをキャンセルするなど少なからぬ影響は出ているとのことで、ツアーで行くような場所は避難指示が出ていない区域ばかりですが、大規模火災の報道を受けて自粛する向きが強くなっていたようです。
そんな折に、知人が立ち上げた能登のメディアも大船渡に来るとのことで、こうした状況を取材してほしいと伝えました。奥能登の方々に寄り添って情報を発信してきたメディアが取り上げてくださったことにあらためて感謝です。

MuTube−被災地と未災地をよくするメディア−
https://www.youtube.com/watch?v=i0AHpv6WCo0
私は私で、昨年暮れにオープンした魚の駅で食事をしたり、リアスホールなどの避難所の状況を確認したり、自分の目で見て肌で感じる時間にしました。

(三色丼!はまぐりのお吸い物も絶品!)

(SEAFOODSTATION 魚の駅 大船渡 店内の様子)
避難所でも小学校の体育館には顔見知りが多く集まっていてすでに自主的な運営ができているなど外部支援の必要がないように見えました。また、リアスホールなどの大規模施設では簡易テントなどを用いて館内でもパーソナルスペースの確保をしようとする気持ちが感じられましたが、それでも大人数を収容している故の手狭さやホール特有の照明の暗さは否めず、また東日本大震災当時を思い出してしまうこともあり、閉塞感を覚えてしまいました。ただ、高校生や卒業式を終えたばかりの卒業生たちが自主的に避難所やボランティアセンターの運営に参加していることが一筋の希望に感じられました。

(避難所になったリアスホール)

(避難所運営サポートチームの高校生)
○あれから14年



(宝来館にて)
釜石と大槌にそれぞれ一泊し再会を喜んだ後、献花をしました。



行く先々で全国から消火活動の支援で来てくださっている消防車を見かけました。釜石は、栃木県、群馬県、新潟県からの消防車の拠点となっていて、私のルーツでもある新潟県の五泉市の消防車もありました。今回の滞在を終えて帰る東北道のサービスエリアでも神奈川県から何台もの大型バスで移動してきた消防士の姿を見かけました。あらためて感謝申し上げます。


○山林火災状況説明会
一部地域が避難指示解除となった滞在最終日、山林火災状況説明会に参加しました。
3.11以降、社協、NPO、JCが日頃から連携しているとのことで、避難所の物資の不足もなく、ボランティアについても当面市内で足りるような説明がありました。私たちのような大船渡の外側にいる者にとっては、綾里の阿部氏ら今後の活動の中心となる方々がこれから発していく情報をキャッチしてできることをしていくことが肝要だとわかりました。
わかめ漁の最盛期にあっての漁業支援、焼損した漁具の支援、消失した山林の復元や地下水への影響、消火のための海水投下による塩害の懸念、そして何より生活再建までの道筋など、中長期的な視座支援が必要です。
大船渡の現状説明の中で、他の地域でも起こり得ることを書き出すと、避難所に若い夫婦の家庭が少ないという報告がありました。これは自分の子どもが避難所で静かにできないだろうと判断し知り合いのところに身を寄せていたり車中泊をしているからとのことでした。また避難所には海外技能実習生の姿も見られませんでした。受け入れ企業で集団避難などしているのではとのことでした。医療機器が必要な障がいをお持ちの方が入れる避難所がある一方でペットとともに避難できる避難所がなく一時預かり所のみの状況であることもわかりました。
しかし、こうした説明会が開かれて懸念点が報告されたことで、翌朝にはペットとともに避難できる避難所が開設されるなど、大船渡という地域の力を強く感じました。

(消火活動が地域の消防団から全国の緊急消防援助隊に移行してからの避難所の様子)
○新しい力
あれから14年で、支援者は3.11の経験が生かされていました。中学生以下の避難者は避難経験がないのでケアの必要性を感じつつも、今回の避難所では中学生や高校生が活躍していました。これまで学校や地域で避難訓練はしてきたでしょうが、実際に支援する側、災害ボランティアの経験はなかったでしょうから、これが自分や地域と向き合うことにつながり、若い子たちにとっても地域にとっても、新しい力が育っていくきっかけになるといいなと思いました。
○現在
市内ボランティアで足りている現状がありますが、近隣地域から私の知人もボランティアに参加している様子がSNSから伝わってきました。



わかめ漁のボランティアでは、お父さんが定置網をやっていて自分も海産物が好きだからと参加した高校生の姿も。頼もしいですね。こうした現場に若い子がいると、大人のボランティアもボランティアの依頼をした漁師さんも活力をもらえますね。更に三陸鉄道では林野火災のボランティアをする高校生たちの活動支援として無料の高校生ボランティアきっぷを発行しています。

○入学式

4月1日、大船渡市立綾里小学校は全国で最も早い入学式を迎えました。この門出を祝うべく地元のステークホルダーであるNPOおはなしころりんの江刺代表の花束を届ける活動に寄付という形で参加させていただきました。同じ市内には、3月をもって閉校した学校もあり、こうしたタイミングで卒業式や入学式の準備など非常に苦慮された事と思います。ですが写真からは「希望」しか感じられません。

(NPOおはなしころりん江刺代表。市内11校で花束を贈呈されました。)
被災地と呼ばれる場所で子どもたちの成長を見守る大人たち。そうした大人たちのひとりでありたいですし、子どもの成長を見守っている方々の一助になれればと思います。
○終わりに
4月7日、大船渡市はこの大規模林野火災の鎮火宣言をしました。ようやくです。そしてやっとここからだと思います。ここまでずっと対応をしてくださっていた方々に感謝です。
ボランティア等の支援活動だけでなく大船渡の魅力的な特産品の購入や観光地への訪問など、引き続きできることをさせていただけたらと思います。

(今回の訪問で購入した大船渡の特産品!)
そばにいる家族を大切に。離れて暮らしている家族を大切に。
一般社団法人デイリーストックアクション 共同代表 梅沢義明
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