三陸うめちゃんコラム
三陸うめちゃんコラムvol.7
2022年8月18日
○黙祷の8月/防災の日を迎えるにあたって
瞼を閉じて静かに手を合わせる時間が他の月よりも多い8月。お盆であることに加えて、広島・長崎の原爆投下、そして終戦記念日。私が暮らす釜石市では、太平洋戦争で2度目の艦砲射撃があった日にも防災無線が鳴り、市民はその場で手を合わせ黙祷します。
戦争で亡くなった祖父、親の顔を写真でしか見たことがない父、防災の日が誕生日の母、東日本大震災津波の被災地で暮らす私。私にとってはルーツを遡り命と向き合う月です。
○浪板ビーチフェスタ2022
東日本大震災津波の影響で地盤沈下して砂浜が消失した大槌町の浪板海岸でしたが、砂浜の再生工事が終了して、この夏、震災後初の海開きが行われました。小学生にとっては、この海岸で生まれて初めて経験する海水浴です。
(震災後初の海開きとなった大槌町の浪板海岸)
8月11日には「浪板ビーチフェスタ2022」と称して3年ぶりの音楽イベントが開催されました。震災後、8月11日に全国各地で行われた「LIGHT UP NIPPON」という鎮魂と復興の祈りを込めた花火を上げるイベント会場でもあったこの場所で、その後継イベントとして始まった音楽イベントでしたがコロナ禍で実に3年ぶりの開催となり、私も久しぶりに運営のお手伝いで参加させていただきました。
(3年ぶりに開催された浪板ビーチフェスタの様子)
震災後の三陸沿岸部では、慰問でフラを多く見る機会に恵まれ、またフラを愛好する方々も多く、浪板ビーチフェスタの最終ステージをフラが鮮やかに彩ってくださいました。
この日の14時46分にも防災無線が鳴り、ステージの裏側に広がる海に向かって、瞼を閉じて静かに手を合わせました。
○釜石高校「夢団」とのコラボ企画始動
静かに手を合わせる8月ではありますが、デイリーストックアクション(以下、DSA)と釜石高校「夢団(ゆめだん)」(以下、夢団)で新たな取り組みが始まろうとする期待感に溢れてもいます。
「夢団」は、釜石高校の生徒有志で結成した、防災・伝承活動やボランティア活動に取り組む団体で、ラグビーワールドカップ2019などで釜石を訪れた方々に釜石鵜住居復興スタジアムで震災伝承うちわの配布や語り部活動を行ったり、防災について学べるオリジナルすごろくゲームを作って子どもたちと交流したり、「ぼうさいこくたい2021」のクロージングに登壇するなど、世代交代しながら活動を引き継いでいくことを目的に結成されました。
私にとってはラグビーの公式戦で、スタジアムイベントを共にしたパートナーでもありましたので、DSAとコラボできないか相談したところ、夢団の防災食班に興味をもってもらえたようで、オンラインを含めミーティングを5月と7月に行わせていただきました。
1回目は、夢団3年生の代表とDSAの東京事務局のメンバーでそれぞれの活動についての紹介や意見交換を行いました。
2回目は、夢団のミーティングに参加させていただき、3年生の活動を引き継いだ2年生が加わって、「○○をやってみよう」として高校生の自由な発想や感想を聞くことができました。防災食班を中心に、これから具体的な取り組みに移っていきますので、お楽しみに。
○写真展開催
また別の活動で、5月と6月に写真展を開催しました。「3つの国の小児病棟で出会った笑顔」展と題して、ウクライナ・ロシア・ベラルーシの小児病棟でのクラウン活動を私が所属する協会主催で全国的に開催しているのですが、釜石市と大槌町でも開催することができました。
テレビで毎日のように繰り返し悲しい映像を見せられるので「もう見たくない」とご老齢の方がおっしゃいました。太平洋戦争や東日本大震災の悲しみを経験されたら無理もないことだと思います。この企画展は「笑顔」がテーマになっていて、どこの病院であっても入院している子どもたちの反応は同じ笑顔だったと「同じ」であることにフォーカスしました。あえてどの国で撮影されたものかを説明せずに写真を「まぜこぜ」に展示することで、国境のないボーダーレスな世界を願うことを表現しています。
かつての原発事故の影響を今も強く受けている地域の病院にも笑顔があり、風船の剣を持つ子どもたちは今、本当の銃を握って戦っているかもしれない…。そう考えるととても切ないことです。こうした写真に接することで何かを感じてもらえたら…。写真展会場にはメッセージボックスを設置しました。その中に入っていたものをひとつ紹介いたします。
小さな子どもにも何かが伝わり、その子がその子の言葉で一生懸命伝えようとして書いてくれたことが感じられるメッセージでした。私もひとりのクラウンとして、風船でウクライナカラーの花をつくり平和を祈りました。
○終わりに/防災の日を迎えるにあたって
震災後初めての海開きのところでも触れましたが、小学生にとってはこの海岸で迎える初めての海水浴となり、当然、震災の記憶はありません。夢団の3年生は当時幼稚園の年長ですから震災の記憶がある最後の世代と言われています。その最後の世代として、震災のできごとを伝え続けていこうとする夢団。こうした若い世代の活動を応援していきたいと思います。
そして間もなく迎える「防災の日」。来年は関東大震災発災から100年の節目を迎えます。台風などの大雨の被害も各地で聞こえてくる時節ですから、今一度、家庭での備えのあり方や避難場所の確認をひとりひとりが噛みしめて行うもよし、家族でピクニックをするように楽しみながら避難路を確認するもよし、せっかくですからよい機会にしたいですね。
静岡県では「静岡県総合防災アプリ」などがあります。皆様のお住いの自治体でも同様の取り組みがなされているかもしれません。防災の日を迎えるにあたって、確認してみると良いですね。
そばにいる家族を大切に。離れて暮らしている家族を大切に。
(追伸) 8月23日
昨日22日、第104回全国高校野球選手権大会で、宮城県代表の仙台育英高校が東北勢として初優勝しました。
震災の記憶がある最後の世代の子どもたちが夏の甲子園で躍動しました。この快挙に東北は喜びに満ち溢れています。
東北から明るい話題を提供でき、誰かの勇気や元気につながっていたら嬉しいことです。
この大会に尽力された皆様にエールを送ります。
デイリーストックアクション実行委員会 副委員長 梅沢義明
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